皆さん、こんにちは。
今回はギタープリアンプのユーザー向けに新たな発見がありましたので共有します!
ペダルプリアンプについて
最近はペダルサイズのプリアンプも選択肢が増えてきました。
やはり、それだけ環境に左右されずに音作りをしたいという需要が高いということだと思います。
ただ、ペダルプリも便利なのですが、とは言えプリアンプはギターアンプのサウンドを構成する要素の1つでしかなく、プリアンプ以降のパワーアンプやキャビネット、スピーカーの影響も大きいことを、このブログでは繰り返しお伝えしてきました。
そして、それらの要素をカバーする方法として、以前には真空管パワーアンプをキャプチャしたIRなども実験し紹介しました。これは、真空管パワーアンプが真空管アンプサウンドにおける鍵だと考えていたからです。
しかし!私は今まで重要な要素を見落としていたのです!
プリアンプが真空管搭載でも。。。
近頃では、以前に紹介したALBIT「A45M pro」、Peace Hill FX「TRJM」など本物の真空管を搭載したプリアンプも色々なメーカーから発売されています。
しかし、プリアンプに真空管が使われていても、繋ぐ先がソリッドパワーアンプであれば結局、真空管アンプサウンドとは程遠いと感じた方も多いと思います。
そして、その場合に感じる違和感は「まとまりの無さ」「立体感がなく平面的」のようなイメージではなかったでしょうか?
もし、そうであれば今回、紹介する方法が参考になるかもしれません。
キーワードは「フェイズ・インバーター」
少し機材の知識がある人であれば、ギターアンプが大きく分けて、プリアンプとパワーアンプの組み合わせで構成されていることは知っていると思います。
しかし、その間にある「フェイズ・インバーター(以降P.I)」という部分が実は重要であることを知っている方は少ないと思います。(私自身もMBT-Customさんに教えていただかなければ、恐らく知らないままでした笑)
これが何かというと、プリアンプを通った信号を位相の異なる2つの信号に分割してパワーアンプに送る回路で、ここには「12AT7」「12AX7」などのプリアンプで使われる物と同じ真空管が使用されています。
つまり、プリアンプを通った信号はパワーアンプに入る前に「P.I」の真空管を通り、場合によってはそこでもコンプレッションや歪みが発生するんですね。
英語ですが勉強になるリンクを貼っておきます→What Does This Thing Do? — Phase Inverter
↑の記事の超ざっくり要約記事を書きました:【TIPS】MOJO TONEのフェイズ・インバーター記事の超ざっくり要約
つまりプリアンプの後ろに真空管を繋いじゃえばいい…ってコト!?
先日、MBT-Customさんに依頼していたDivided by 13(以降÷13)「FTR37」というアンプのCH1を再現した真空管プリアンプがついに届きました!
しかし、現在所有しているアンプは÷13「SJT10/20」というセンドリターンの無い機種のみ…
そのため、BOSS 「TUBE AMP EXPANDER(以降TAE)」のリターンに繋いで、TAEのソリッドステートパワーアンプで鳴らしてみたのですが、やはりどうしても真空管アンプとは違うサウンドに…
仕方がないかと思っていたところ…以前に教えていただいた「FTR37」はプリアンプでは歪まず「P.I」で歪む回路になっているという話を思い出しました。
つまり、FTR37プリアンプの後ろに真空管ブースターを繋いで、なんちゃって「P.I」にしちゃえばいいって…コト!?
久々の出番だ!LCA 12AX7BB!
÷13「FTR37」の「P.I」と同じ12AX7の真空管ブースターを検討した際に、以前に紹介したLee Custom Amplifier「12AX7BB」(売却済み)とFlying Teapot「Tube Feeder」の2機種で悩んだのですが、結果的には下記の点で「12AX7BB」を買い直すことにしました。
- 「Tube Feeder」は試したことがなく、プリアンプ後の大音量の信号をきちんと受け止められるか不安だった(LCAは以前に試して性能に問題がないことが分かっていた)
- 今回の使い方では「Tube Feeder」のトーン回路が余分に思えた
サンプル音源<なんちゃってフェイズ・インバーター>
録音環境は下記です。
アンプ:リアンプDI→ ÷13 SJT10/20→ BOSS TAE→ 1×12キャビ(Vintage30)
※÷13 SJT10/20はFTR37のCH1を抜き出したようなアンプです、たぶん。
プリアンプ:リアンプDI→ ÷13プリアンプ→(12AX7BB→)BOSS TAE(リターン)→ 1×12キャビ(Vintage30)
それらをAKG C414 XLS→ oz design OZ-1000mobile→ RME UCX→ DAWで録っています。
歪み
まずは、真空管アンプ実機のサウンドです。
次に、真空管プリアンプをTAEのリターンに繋いだサウンドです。
こちらでは、真空管プリアンプのGainで歪ませています。(本来、元ネタのアンプはプリアンプだけでは歪まない回路なのですが、MBTさんの工夫で単体でも歪ませられるようになっています)
これでも十分に良い線はいってるのですが、どうしてもアンプ実機とは違ってきますね。
そして、こちらが真空管プリアンプの後ろにLCAの12AX7BBを繋いだサウンドです。
こちらでは、真空管プリアンプのゲインはクリーン~微クランチ程度、「12AX7BB」はブーストモードにして、プリアンプのアウトプットの音量で12AX7の歪み具合を調整、最終的な音量は「12AX7BB」のレベルで調整するような使い方をしています。
プリアンプ後の信号を「12AX7BB」で歪ませているので、サウンドのまとまり感や歪み方という面ではかなり実機に近づいたのではないでしょうか?
残る違いとしては、アンプ実機のサウンドの全体を包み込む「モー」っとした感じ(上手く言葉にできないですが…)や、僅かな滲み感などは真空管パワーアンプならではなのかなと感じました。
クリーン
クリーンでも使えると感じたので紹介しておきます。
やはり、12AX7BBを繋ぐとレンジが整理されて焦点が合うような印象を受けますね。また、実際に弾いている感覚としてプリアンプだけの場合より弾きやすさも感じます。
ただ、私が弾いたことのあるFender「Twin Reverb」は、どちらかと言えばプリアンプのみの場合の方が印象に近いような気もするのでアンプによるのかもしれません。
注意点
再現したいアンプの回路による
まず、今回ご紹介した方法でサウンドが近づくのは、÷13「FTR37」や「SJT10/20」のように実機が「P.I」によるサウンド変化を伴うアンプの場合です。
アンプでは「P.I」の真空管も歪んでいるという話をしましたが、ゲインの低い真空管を使ったり、センドリターンやマスターボリュームの絡みで結果的にそうなったりなどで「フェイズ・インバーター」での歪みが発生しづらいアンプも多いようです。
試してみなければ分かりませんが、Fenderアンプなどが好みの場合は、12AT7などのよりヘッドルームの大きい管を使った真空管ブースターがあれば元のアンプのニュアンスにより近づけられるのかもしれませんね。
真空管アンプのリターンに繋ぐ場合
プリアンプを繋ぐ先が真空管アンプのリターンである場合は、本物の「P.I」も通ることになりますので、繋ぎ先のアンプとの相性によって調整する必要がありますね。
真空管の負荷について
プリアンプで増幅した信号を真空管ブースターにぶち込んでいる訳なので、後ろに繋ぐ真空管には結構な負荷がかかっているのかもしれません…電子の知識はないので分かりませんが笑
また、あんまりにも大きな音量を突っ込むと機器によっては壊れる可能性などもあると思いますのでご注意を!
もし今回、紹介した内容を試される場合は自己責任でお願いしますね!笑
終わりに
私自身もプリアンプオタクとして試行錯誤してきた中で、接続先がソリッドパワーアンプの場合は諦めるしかないと思っていましたが、思わぬところで光明が差してきました!
今までは真空管パワーアンプによる変化が重要なのだとずっと思っていましたが、どうやら「プリアンプ後の信号を一度、真空管で受け止めること」が真空管アンプサウンドを形作る上でキーとなる要素だったようです。
しかし、同時にサウンド全体の柔らかさや周波数特性という部分の再現には、真空管パワーアンプが関わっていることも分かりました。そのため、パワーアンプIRと組み合わせることでよりサウンドを近づけることが出来るかもしれません!
今回、紹介した方法は真空管アンプサウンドに近づけるという面でも有効ですが、プリアンプ+真空管ブースターであれば、本物のアンプと違ってプリアンプ部の歪みと「疑似P.I」部の歪みを個別に調整することが出来るのも1つのメリットかもしれませんね。
また、アンプシミュレーターの「Dream’65」でも試したところ、元々プリアンプ以降も含めてシミュレートされているため変化は少なかったですが、真空管アンプの弾きやすさ、奥行きのような部分は増した気がしたので、アンプシミュレーターの弾き心地みたいな部分で不満がある場合はいいかもしれません。
以上、今回もありがとうございました。
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