ギターの音に関わるあれこれについて情報の共有をしていきたいと思います。今回はアンプシミュレータのKemper Profiler(ケンパープロファイラー)について。
発売されてから8年が経つKemper Profilerですが、日本語ではあまりノウハウ等の情報が出回っていない気がするので、ここで自分の経験などからお伝えできることを書いていこうと思います。
アンプセクションの設定について。
ほとんど触らないという方も多いのではないでしょうか。公式のマニュアルにも説明がありますが、ちょっとややこしいので、簡単に説明するとこんな感じです。
Definition:ディフィニション
アンプのキャラクターを大きく左右する重要なパラメータです。基本的に強調する帯域を調整するパラメータという認識でいいと思います。アンプのEQは微調整に使い、先にサウンド全体のピークと明るさ・太さをディフィニションで調整しておくのがおすすめです(拾い物のリグは特に!)。ちなみに、プロファイリング後、少しだけ上げると良いよって説明書には書いてあります。
動作としては
- 上げる:音の重心が上がる、弦の音が前に出て分離感がよくなる
- 下げる:音の重心が下がる、弦の音が引っ込んで分離感がなくなる
例えば、ゲインを上げて音が引っ込んだのをディフィニションで補正する(逆もしかり)みたいな使い方もできると思います。
また、上げると歪みのキメが細かくなりモダンな雰囲気に、下げていくと歪みが荒くなり古いFenderアンプを無理やり歪ませたような雰囲気に近づいていきます。
ただ、あまり大きく上げ下げすると、どれも似たような音になっちゃうのでご注意を。
Power Sagging:パワーサギング
クリーン~クランチに力強さ、太さが加わる。ヴォリュームを絞った際のクリーンは変化が分かりやすい。帯域の変化としては、公式の説明ではプレゼンスが増すとのことですが、個人的にはローミッドが増す印象の方が強いです。
そのため、少しだけ太さが欲しいなという時には上げてみてください。ただ、上げ過ぎるとすぐにローミッドが邪魔になってきますのでご注意ください。また、ピッキング等への反応性も良くなるとのことです。
普通のスタジオプロファイルのリグでは、反応性の甘い部分を補う意味でとりあえず上げておいて良いと思いますが、ダイレクトプロファイルしたリグでは素の状態で反応性などがより良くキャプチャーされているので、あまり上げなくてもいい印象です。
アナライザで見るとこんな感じです。
Pick:ピック
ピッキングのアタックを強調したり、抑えたりできる。アタックを強調したい時に0.1~0.3くらい上げるのがおすすめ。
Compressor:コンプレッサー
頭を押さえる普通のコンプではなく、ボリュームを絞った時のクリーンの音量だけを上げるパラメータです。こういうのもデジタルならではの強みですね。
1.5くらいまで上げるとギターボリュームを下げていっても音量感が一定の状態にできます。マニュアルでは歪んでいる音に影響はないと書いていますが、1.5まで上げると音の奥行きが失われてのっぺりするので、上げても0.8くらいがいいかもしれません。
※2020/04/08追記
最近になって、このパラメータは上げるにつれて音の中にクリーンの芯が出る様な効果を感じるようになりました。特にライン録音の際に音に芯が欲しいという場合に~1.5くらいまで上げて上げると良い印象です。
Clarity:クラリティ
上げるほど中域の歪み感が抑えられて滑らかになるイメージです。歪みのブチブチした感じも減っていきます。アナライザで見ると単純にミドルを抑えているとかではないみたい。
感覚的には歪んだ音の中で、歪んだ部分と弦鳴り(クリーンっぽい要素)の前後関係を調整するツマミと捉えると分かりやすいかもしれません。Clarityを上げるほど歪み要素が奥にいき、弦鳴りが前に出てくるイメージです。
歪みに埋もれ過ぎだと感じる場合に上げてみてください。また、若干レンジが狭まってミドルに寄る感じもあるので、2くらいまで上げておくとバンドなんかで扱いやすいかもしれません。
Tube Shape:チューブシェイプ
歪みのキャラクターをプリチューブ↔パワー管の間で調整するツマミとのこと。上げるにつれハイが増し、若干歪みのキメが細かくなる印象です。
感覚的には上げると音に暑苦しさというか、上手く言えないのですが暴れ感みたいなのが出てきます。倍音を調整しているのかもしれません。
迷った場合は、このパラメータはデフォルトのままで良いと思います。
Tube Bias:チューブバイアス
上げるほど小さい入力から歪み始めるようになるパラメータですが、感覚としては音のクリーンと歪みの間を埋めるような印象です。ピッキングの強弱でのクリーンと歪みの間が急過ぎると感じる場合に上げてみてください。
また、若干音がふくよかにもなりますが、上げすぎると立体感のない音になります。
弾き心地が固くて弾きづらいという場合に、0.6~1.8くらいで設定してあげるとタッチが柔らかくなって弾きやすくなります。
Direct Mix:ダイレクトミックス
クリーンサウンドをミックスするパラメータ。クリーンアンプを同時に鳴らした時の効果を狙っているとんことで、ギターの生音がそのままミックスされるわけではありません。ちなみに、ミックスされるクリーンにもディフィニションは効きます。
もう少し音に芯が欲しいというような場合に、クランチで0.2~0.6、ディストーションで0.8前後に設定してみるといいと思います。
あくまで、クリーンのアンプを同時に鳴らしている効果ということなので、上げ過ぎるとけっこう違和感が出てきます。
参考
有料リグでよく見るセッティングです。
- Power Sagging:2~3
- Compressor:1.5
- Clarity:2~3
まとめ
私も以前はアンプセクションの設定をほとんど触っていなかったのですが、最近になって非常にかゆいところに手が届く機能だと気づき、他のKemperユーザーにもこの便利さを知ってもらえればと思って記事にしてみました。元のアンプを高いクオリティで再現するだけでなく、更にそのアンプの気に入らない部分まで自分好みに変えることが出来るのもKemperの強みですね。
大手のマルチはほとんど所有したことがありますが、他社製品と比較してもKemperのアンプリファイア設定には、非常に直感的かつ効果的なパラメータが多いと思います。特にディフィニションの感覚が掴めれば拾い物のリグでも使える幅が大きく広がるので、ここだけでも触ってみると良いと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回は、電源ケーブルでKemperの音は変わるのかについて書いていきたいと思います。
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